著者のコラム一覧
鈴村裕輔野球文化学会会長・名城大准教授

1976年、東京都出身。法政大学博士(学術)。名城大学外国学部准教授。主な専門は政治史、比較思想。野球史研究家として日米の野球の研究にも従事しており、主著に「MLBが付けた日本人選手の値段」(講談社)がある。スポーツを取り巻く様々な出来事を社会、文化、政治などの多角的な視点から分析している。アメリカ野球学会会員。

アリゾナ、フロリダでの公式戦実施案はTV局と政権への配慮

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 最大の理由は、テレビ放送にある。

 すなわち、フロリダ州はニューヨーク州やワシントンDCと同様の東部標準時に属し、アリゾナ州はコロラド州などとともに山岳部標準時に含まれる。両者の時差は2時間だ。しかも、アリゾナ州は一部の地域を除いて夏時間を採用しない一方、東部標準時に属する州では夏時間が採用されており、現時点での2つの地域の時差は3時間となっている。

 従って、フロリダ州とアリゾナ州のみで公式戦を行えば、同じ「午前11時試合開始」であっても、例えばニューヨークの視聴者は時差を利用して野球の試合を一日中楽しめることになる。

 NBAがシーズンを中止し、NFLも公式戦の期間の短縮を検討している中で大リーグが公式戦を行えば、テレビの視聴者の関心が従来以上に高まり、視聴率が上昇することが予想される。そして、視聴率の上昇は放映権を持つテレビ局に利益をもたらす。

 このように、大リーグ機構内で検討されている案は「公式戦の実施は、他の競技が行われていない時期にこそ行われるべきだ」という考えを背景としているのである。

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