分配金バブルが引き起こす球団経営者の「モラルハザード」
メジャーリーグは60試合に短縮して23日に開幕するが、米国ではコロナ感染者数が増え続けているため、全試合無観客で行われる可能性が高くなっている。
30球団の中には無観客になったことで大きなダメージを受けるところと、かすり傷程度で済むところがある。ダメージが大きいのは入場料収入の比率がメジャーで最も高いアストロズとカブスである。この2球団は連日満員で入場料収入が総売り上げの43%を占めるため、どちらも無観客になることで2億ドル(約214億円)くらいの損失が出る。
■総収入の10%前後
一方、軽傷で済むのは入場料収入の比率が低いマーリンズ、オリオールズ、タイガースである。この3球団に共通するのは表に「再建中」の看板を出したまま、選手の補強にカネを使わずに100敗するのを放置していること。ファンに見放されスタンドは閑古鳥が鳴いているため、入場料収入は総収入の10%前後しかない。そのため全試合無観客になっても失うものは少ないのだ。
経営学的な視点から見たメジャーリーグの特徴は、チームを強くする経営者責任を放棄しているオーナーが多数存在すること。そんな無責任経営者が多くなるのは毎年5170万ドル(約55億円)も支給される全国放映権料の分配金が、彼らのモラルハザードを引き起こしているからだ。