柔道金メダリスト内柴正人さん 第2の人生は“銭湯のオヤジ”
休憩時間には豪雨被災地で清掃ボランティア
内柴さんは、柔道現役時代から毎日、銭湯に通っていたくらいのお風呂好き。現役引退後、入浴施設勤務も考えていたという。
「だから2級ボイラー技士と危険物取扱者乙4類の資格をすでに持ってたんです。40、50キロぐらいならポンプの取り換えも、ひとりでやっちゃいますよ。柔道でガッツリ鍛えてて本当によかった。アハハハ」
接客の経験はあったのか?
「いや、まったくないです。もちろん研修は受けましたが、日々、お客さんとウチのスタッフに教えてもらうことだらけ。先日も『家族湯の泉温が低い』ってクレームをいただいたり、失敗もあります。でも、いろんなお客さまがお見えになるし、毎日が新鮮。役職柄、休みらしい休みはないのですが『ありがとう』の言葉をかけてもらえると、疲れが吹き飛びますね」
転職直後に発生した新型コロナ禍には、かなり影響を受けた。
「熊本県は5月19日に休業要請が終了し、それから徐々に客足は回復しつつあります。それでも平日は300~400人、休日で500人ほど。前年比で3割以上落ち込んでいます」
そんな7月上旬。熊本県南部と北部が大豪雨に襲われ、球磨川沿いの八代市坂本地区、人吉市、球磨村、芦北町に甚大な被害が発生した。
「当面、被災地にお住まいの方は入浴無料サービス中です。グループでお越しいただいても構いません」
内柴さん自身、休憩時間を利用して、たびたび芦北町へ清掃ボランティアに出掛けている。
「これからは人吉のほうへも行こうと思っています。現役時代にお世話になった方も多いので恩返しですね」
実家は熊本市からやや北寄りの合志市。通うには遠いため、敷地内の社宅で2年前に入籍し今年1月12日に挙式した奥さん、1歳の長男と3人暮らしだ。
「嫁は九州看護福祉大学女子柔道部の教え子で、14歳年下です。6月19日に県をまたぐ移動などの外出自粛が緩和されて忙しくなってきたので、ウチの厨房で働いてもらっています」
義理の叔母はすりおろしニンニクが入ったニンニク醤油で焼く「美味だれ焼き鳥」の店を経営しており、「いずれ美味だれ焼き鳥をウチの店の名物にしたい」と意欲的だ。
(取材・文=高鍬真之)