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山田隆道作家

1976年、大阪生まれ。早大卒。「虎がにじんだ夕暮れ」などの小説を執筆する他、プロ野球ファンが高じて「粘着!プロ野球むしかえしニュース」などの野球関連本も多数上梓。各種スポーツ番組のコメンテーターとしても活躍中。

新庄剛志のプロ野球復帰断念に少しほっとしている理由とは

公開日: 更新日:

 私も阪神時代の新庄に魅了されたファンのひとりだから、その気持ちはとてもよくわかった。もしも新庄が甲子園に戻ってきたら興奮するに決まっている。グッズもバカ売れするだろうし、広告効果も計り知れない。

■ファンサービスは副次業務

 しかし、プロ野球がそれを主目的として選手を獲得してはいけないとも思っていた。ファンサービスは重要だが、それはあくまで副次業務として重要なのであって、副次業務が主体となっては本末転倒だろう。実質的にそういう無形の価値が優先されているように見えなくもない現役選手もちらほらいるが、それでも表向きは選手としての価値が前提だ。建前も時には必要だと思う。ファンのためだと開き直られては興ざめしてしまう。

 プロ野球は確かに興行であり、だから金を払ってでも見たい選手がいるというのは確かに重要なことだ。しかし、ファンあってのプロ野球であると同時に、高レベルの野球があってこそのファンでもある。新庄は野球選手として一年を通して働けるのか。瞬間的な力は発揮できても持続力はあるのか。そこを見極めるのはトライアウト1日では難しかった。たとえば独立リーグで長期間プレーしてみるなどの材料がないと判断できない。

 そう考えると、新庄獲得に動く球団がなかったことに少しほっとしている。興行的にはまちがいなく利益が上がる新庄という劇薬をあえて飲まなかったプロ野球は捨てたもんじゃない。プロスポーツの運営は、ファンのニーズとすべて一致させる必要はないのだ。

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