楽天田中の根底に米復帰願望 年俸9億円“助っ人契約”の波紋
言ってみれば、超大物の助っ人外国人選手と似たようなものかもしれない。
1月30日、古巣・楽天への復帰会見を行った田中将大(32)のことだ。
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年俸9億円プラス出来高払いの2年契約ながら、今季終了後に球団と去就を話し合うという。「アメリカでやり残したことがある。自分の中での選択肢、オプションは完全に捨て去りたくはなかった」そうだから、今季終了後、自由契約になって再び米球界に戻る可能性もあるのだ。
1年後に契約を破棄できるオプトアウトの権利を、球団ではなく田中がもっている。完全に選手有利の契約は、まるで日本のプロ球団が現役バリバリの大リーガー助っ人を連れてくるときのようだ。
田中は実際、メジャー5球団前後からオファーがあったらしいから、現役バリバリの大リーガーには違いないが、通常の助っ人と異なるのはファンや周囲の期待と金額の大きさだ。
本人は会見で「決して腰掛けなどではなく、本気で日本一をとりにいきたい、イーグルスでプレーしたいと心から思っての決断」「(恩師の故・野村克也氏と故・星野仙一氏に)シーズン終了後には日本一になりましたというご報告をすることができたら」と、目標は日本一と公言。「震災から10年という数字は自分の中で意味のあるタイミング」と、自ら東北のファンにも大きな期待を抱かせた。
年俸9億円は助っ人外国人も含めてプロ野球史上最高額。大金を手にするうえ、自ら「腰掛け」を否定、「本気で日本一をとりにいく」と、ファンにフル回転を約束した以上、多少、肘が痛かろうが、コンディションが万全でなかろうが、休むわけにいかないのではないか。
ファンからの重圧はヤンキース以上
ア・リーグのあるスカウトによれば、「田中がヤンキースで7年間、フル回転した心身のダメージはハンパじゃない」という。
ヤンキースはメジャー30球団の中でも、ファンやメディアが飛び抜けてシビアな球団だ。田中は昨年のプレーオフ地区シリーズで同地区のライバルであるレイズに打ち込まれて敗戦投手になった直後、ニューヨークのメディアにこっぴどく批判され戦犯扱いされた。右肘靱帯の部分断裂という爆弾を抱えながら全米屈指の人気球団で長期にわたってプレーした心身のダメージは察するに余りあるが、どれだけファンやメディアにたたかれようと、スター揃いのヤンキースではしょせん「大勢の中のひとり」。しかし、プロ野球史上最高額の年俸を手にして、ファンの期待を一身に浴びる今回はある意味、ヤンキース以上のプレッシャーにさらされることになる。
■ひとつ減る先発枠
1日からキャンプが行われるチームへの影響も計り知れない。
これまで楽天の選手の最高年俸は浅村(30)で5億円。これに則本(30)の3億円、松井(25)と岸(36)の2億5000万円と続く。田中は浅村の倍近い金額を手にすることになる。キャンプも日本人選手ではひとり、中盤からの参加が予定されている。
むろんプロは結果がすべて。9億円の年俸も納得の突出した成績を残せばともかく、そうじゃなかったときは間違いなく内部の波紋を呼ぶ。
田中の加入によって先発の枠はひとつ減る。塩見(32=昨季16試合に先発して4勝8敗)、石橋(29=同13試合で1勝6敗)、弓削(26=同10試合で3勝2敗)ら、ローテーション当落線上の投手枠を削ることになるのだからなおさらだ。
スポーツマスコミは田中(日米通算177勝)、涌井(通算144勝)、岸(同132勝)、則本(同85勝)を「四天王」「12球団最強ローテ」などと騒いでいるが、期待が大きい分、田中本人とチームが背負うリスクも大きいのだ。