大乱闘の試合後に、傷だらけのトレーバーとまさかの遭遇
金田正一さんは選手の健康管理に人一倍、目を光らせる監督だった。ランニングの量を増やし、散歩を課した。禁煙推進もそのひとつだった。特に投手には、「体に悪いものなんか吸うな」と口酸っぱく言っていた。
当時は私も含め、今よりも選手の喫煙率は高かった。そんな監督の方針の下、コーチは禁煙を義務付けられていた。そんな中、遠征先であるコーチが「たばこを1本くれ」と声をかけてきた。
「選手の前で吸っちゃあマズいでしょ」
「そんな固いこと言うなよ」
仕方なく1本差し出すと、そのコーチは陰に隠れてプカプカと煙を吐き出していた。
■禁煙推進の余波も
その日の夜。チームメートと宿舎で食事をしながらビールを飲んでいた。同じテーブルにいた後輩選手が先輩のグラスが空になりそうなのを見て、瓶からビールをついだ。
その瞬間、球場でたばこをおねだりしたコーチが私たちのところへつかつかと歩み寄ってきて、「コラ! 監督が酌をするなと言ってるだろ!」と、大声で怒鳴り上げた。