畑岡奈紗が米ツアー4勝目で五輪に弾み 地の利だけじゃない金メダルへのアドバンテージ
【マラソン・クラシック】最終日
最後は天を味方につけた。米女子ゴルフのマラソン・クラシックは現地時間11日、オハイオ州シルバニアのハイランドメドーズGCで最終ラウンドが行われたが、悪天候のため途中で中止。畑岡奈紗(22)が前日の第3ラウンドまでの成績により、通算19アンダーで優勝し、2019年3月の起亜クラシック以来となる米ツアー4勝目を挙げた。
中断してから車で待機していたという畑岡は「ショットがかなり安定していた。この狭いコースで特にティーショットがほとんどフェアウエーを外さずにいけたのが大きかった」と、今大会を振り返った。
今季は得意のアイアンショットが精彩を欠き、見せ場がなかった。6月の全米女子オープン最終日は68の猛チャージで笹生優花(20)とのプレーオフに持ち込みながら惜敗。悔しい思いをした。
畑岡は16年の日本女子オープン(当時高校3年)でメジャー史上初のアマチュア優勝を達成。17歳263日でのツアー優勝で05年宮里藍の大会最年少優勝記録を塗り替えた。女子オープン優勝直後にプロ転向。同年の米女子ツアーテストを通過し、翌年から主戦場を米国に移した。
■2018年に大魚逃す
米ツアー参戦2年目の18年6月に米ツアー初優勝。19年3月起亜クラシックで通算3勝目を挙げた。その間、18年の全米女子プロ選手権では最終日に64と爆発。通算10アンダーで首位に並び、韓国勢2人とのプレーオフに持ち込んだが、敗れて2位だった。
ツアー関係者が言う。
「当時、畑岡は19歳。樋口(久子)さん以来の、日本女子41年ぶりのメジャー制覇かと思いました。1ホール目にバーディーを奪えず大魚を逸した。間違いなく日本の女子プロを牽引するエースですが、19年の全英女子では、海外試合初挑戦の同学年の渋野日向子(22)がいきなり優勝。先月の全米女子オープンも19歳の笹生の前に涙をのんだ。実力はナンバーワンでも、“2番手”という印象が強くなってしまった」
ショット精度、多彩なアプローチ、ソフトなグリーン
そんな畑岡が密かに狙っているのが、東京五輪の金メダルではないか。
女子ゴルフの海外メジャーは、ANAインスピレーション、全米女子オープン、全米女子プロ選手権、エビアン選手権、全英女子オープンの5大会だ。メジャー大会は永遠に続くが、16年のリオ五輪で112年ぶりに復活したゴルフは、先行き不透明だ。競技時間が長く、広大な敷地で全選手(男女各60人)が18ホールに分かれてプレーしているため状況が瞬時に見えない。試合の流れも把握しづらく、テレビ視聴率と若者重視の国際オリンピック委員会(IOC)には不評と言われている。
「正式競技に復活したばかりですが、五輪には不向きという声が多く、いつ除外されても不思議ではない。畑岡は母国開催の大会で日の丸を掲げたいと強く願っているに違いありません」(テレビ関係者)
■強化選手指定で会場では自由に練習可能
思い入れの強い大会の舞台は埼玉県川越市の霞ケ関カンツリー倶楽部東コース(バックティー・7466ヤード・パー71)。
1929年開場の林間コースは、17年11月にトランプ前米大統領と安倍晋三前首相がゴルフ外交を行い注目された。
「五輪強化選手の指定を受けており、会場で自由に練習できるなど、地の利があるというだけでなく、畑岡向きの舞台です」と、並木俊明プロがこう言う。
「距離は長くないですが、池のプレッシャーがない分、松の木が密集している林間コースです。樹木がまばらな米国のコースとは違います。日本の林間に慣れているし、ジュニア時代からここでプレーしている畑岡にとっては、いい意味で両サイドの林が壁に見える。五輪に向けて改造したワングリーンはうねりが強く、いわゆるポテトチップのような傾斜がある。おそらく五輪ではグリーンの端にピンを切るでしょう。ボールの落としどころが重要になる。畑岡はアイアンの精度が戻ってきたし、グリーン回りのアプローチの技も豊富。ニアサイドのラフからもうまく寄せる。夏の霞ケ関は猛暑です。ショットの勝負が濃厚ですから楽しみです」
川越市は、真夏になると気温が40度を超える日もある。ベントグリーンをパンパンに硬くして、高速に仕上げるのは難しい。ソフトになればショットメーカーが有利なだけに畑岡にもメダル取りの可能性が膨らむ。
メジャー優勝は渋野、笹生に先を越された畑岡。日本選手初の五輪金メダリストになるか。