大谷翔平フル回転の裏にエ軍“二刀流消滅プラン” 危機感が奏功し好成績に
エンゼルスのミナシアンGMが、大谷翔平(27)の起用法に関して制限を設けないと明かしたのは今年3月だった。
■ルール撤廃は球団主導
昨年までは「大谷ルール」が存在した。登板日前後は原則、野手としても出場させない。大谷獲得最大の功労者であるエプラー前GMは、日本ハム時代からの起用法を踏襲し、投手と野手の二刀流が負担にならないよう配慮した。今季から就任した新GMは、そんな「大谷ルール」を撤廃、起用法の制限を完全に取り払ったのだ。
これによって投打同時出場のリアル二刀流や登板日前後のDH出場が可能に。
「体も強くなったし、状態もいい」「ジョー(マドン監督)も同じ意見だ。彼の邪魔をするのはやめようということになった」(ミナシアンGM)などと、二刀流にこだわりを持つ大谷の希望を受け入れたかのように好意的なスタンスで報じられているものの、「逆ですよ。大谷ルールの撤廃は本人が希望したものではない。ミナシアンGMがマドン監督と相談して球団主導で決めたこと。起用に関するリミッターを外したのは、球団なりの思惑があったのです」とは現地特派員だ。
160キロの剛速球を投げて、特大の本塁打を放つ。大谷のポテンシャルの高さは誰もが認めるところとはいえ、昨年まではそれが結果につながらなかった。
1年目は投手として4勝2敗、打者として22本塁打をマークしたが、オフに右肘靱帯を再建するトミー・ジョン手術。2年目は野手に専念して18本塁打で、9月中に今度は左膝を手術。投手として復帰した昨年は2試合に登板しただけ、打者としても44試合で7本塁打にとどまった。投げて打てる選手ながら、投打とも平凡な数字しか残せなかった。
本人を納得させる
それだけにキャンプ前には米メディアから「4年目の今季、投打ともパッとしないようなら、打つか投げるか、どちらかに専念させるべき」との声が上がったが、「そう思っていたのはメディアだけじゃありません。誰あろう、エンゼルスも大谷を投打どちらかに専念させようと考えていたフシがあるのですよ」と前出の特派員がこう続ける。
「二刀流起用の制限を撤廃したのもそのため。投打にフル回転して、それでも結果が出なければ本人もさすがにあきらめるだろうとね。大谷がポスティングでエンゼルスに入団する際、当時のエプラーGMは二刀流起用を約束している。だからこそ大谷もエンゼルスを選択した。米国でベーブ・ルース以来の二刀流選手として注目されていることもあって、投打どちらかに専念させるためには本人が納得する以外に方法がない。思う存分、投げて打って、それでも結果が出なければ本人もこだわりを捨てるだろうという計算がエンゼルスにはあったのですよ。大谷は球団のそんな思惑を知ったからこそ、今季はこれまで以上に目の色を変えたのではないか」
■イチローのもとに駆け付け
大谷は追い込まれると力を発揮する。いい例がメジャー1年目だ。オープン戦は2試合に登板して0勝1敗、防御率27.00。2回3分の2で9安打9失点、3本塁打を浴びた。打つ方も32打数4安打(打率.125)、10三振と散々で、同じアリゾナでオープン戦を戦うイチロー(現マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)のもとに駆け付け教えを請うたほど。「評判倒れ」との声を払いのけるように必死になった結果が1年目の成績に結び付いた。
今季は開幕から投打とも全開。前半戦は投げて4勝1敗、防御率3.49、打ってメジャートップの33本塁打。球宴前日のホームランダービーは初戦敗退も、肩で息をしながら、これでもかとバットを振り回した。本番の球宴では1番・投手で先発出場。打者として2打席凡退したが、投げて161キロをマーク、勝利投手にもなった。2日間を通じて何度も「疲れた」と言いながら、終始、笑顔を振りまいた。
大谷が今季、しゃかりきになってプレーしているのは、結果が出なければ二刀流を断念しなければならないという危機感があればこそというのだ。