【フェンシング】史上初「金」獲得でも報奨金なし? 武井壮新会長に求められる待遇改善
日本のフェンシングが初めて頂点に立った。30日の男子エペ団体決勝でRОC(ロシアオリンピック委員会)を45―36で下し、同種目で初の金メダル獲得。決勝の舞台に立った山田優(27)、加納虹輝(23)、宇山賢(29)の3人が、これまで銀が最高だった日本に金をもたらした。
とはいえ、史上初の快挙でもメンバーが報われることはなさそうだ。日本フェンシング協会では報奨金支給の規定が明文化されておらず、金メダルを獲得した団体メンバーは現時点で臨時収入を手にできないのだ。
■太田改革で収入増も遠征費は自己負担、バイトの日々
日本協会では北京、ロンドン2大会連続銀メダルの太田雄貴が2017年に会長に就任してから、さまざまな組織改革を断行。大会の冠スポンサー、協会への支援企業の獲得に乗り出し、スポンサー収入は従来の6倍に達したといわれる。協会の懐は当然、潤ったはずだが、選手へのサポートは手厚いとは言い難い。
昨年6月に日本協会が発表した財政状況によれば、18年度の代表選手の海外遠征費は総額で約1億8000万円。そのうち44%にあたる約8000万円を選手が自己負担した。日本協会では1人当たりの負担額を明らかにしていないが、昨年3月、ロンドン五輪男子フルーレ団体銀メダルの三宅諒が自身のSNSに同協会から届いた1カ月半の海外遠征費用約67万円の請求書を投稿。あわせて活動資金を得るため、宅配のアルバイトを始めたことなどを公表している。
タレントの武井壮新会長は今年の6月の就任会見で「多くの選手が世の中に認知されていないのは大きな課題であり、彼らの人生を変える道筋をつけられるよう尽力したい」と話した。今回の快挙を追い風に選手の待遇改善につなげられるのか、新会長の手腕にかかっている。