日大・田中前理事長の逮捕が及ぼす角界への波紋…“アマ相撲界のドン”は東欧ルートにも影響力
脱税容疑で逮捕された日大の田中英寿理事長(74)の辞任が1日の臨時理事会で決定した。
田中理事長はマンモス大学の経営者と同時に「日大相撲部総監督」という顔も持つ。「アマ相撲界のドン」として君臨し、大相撲に与える影響力も大きかった。
11月場所終了時点で、日大出身者は幕内に4人。十両を含めた関取衆は総勢10人いる。一時期に比べて減ったものの、それでも角界の一大勢力だ。これまで育てたプロ力士は50人以上。卒業生の相撲部屋への振り分けも、理事長の胸ひとつだ。
「この差配を断ったのは白鵬の内弟子で、すでに引退した大喜鵬のみ。本人が『白鵬の内弟子になりたい』と理事長の指示を拒否したことでOB会にも呼ばれず、日大ではほとんどいなかったも同然の扱いです。近年では人気力士の遠藤も逆鱗に触れた。田中理事長は大阪と東京に遠藤の後援会をつくり、嫁取りも世話しようとしていたが、相談なく別の女性と結婚。これに田中理事長は激怒し、『今後、オマエとは一切関わらない』と絶縁を伝えたそうです。元小結両国の境川親方とも昔いざこざがあり、『あの部屋にだけは部員を入門させん』とかたくなです」(日大関係者)
自分に従わない者には容赦しない一方、気に入った親方には惜しみなく力士を供給する。
「顕著なのが元横綱佐田の山さんが師匠だった当時の出羽海部屋でしょう。田中理事長はアマ相撲普及のため、相撲を五輪競技にしようと動いていた。それに協力していたのが出羽海親方。見返りに元関脇の出羽の花や両国、元平幕久島海ら有力な部員をどんどん入門させた」(角界OB)
近年は琴欧洲ら東欧勢の供給ルートも開拓していたというのだから、驚きだ。
初代若乃花と論争
ただ、「理事長を辞任しても相撲部には影響力を残すのでは」という声もある。
「国内外問わず、抱えている人脈は無視できない。何より本人は相撲が生き甲斐。昔、初代若乃花さんと『小兵は下手で組むか上手で組むか』で大論争をしたこともあった。若乃花さんは、上手を取って出し投げをすべきと主張し、田中理事長は下手だと互いに一歩も譲らなかった。元横綱輪島さんですら、三役に上がった頃は日大で1年先輩の理事長に歯が立たなかった。輪島さんが日大3年時に学生横綱に輝いたのも、田中理事長が『無冠でプロというのもかわいそうだから』と、あえて身を引いたと本人の口から聞いています」(前出の角界OB)
角界も固唾をのんで事の成り行きを注視しているーー。