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元川悦子サッカージャーナリスト

1967年7月14日生まれ。長野県松本市出身。業界紙、夕刊紙を経て94年にフリーランス。著作に「U―22」「黄金世代―99年ワールドユース準優勝と日本サッカーの10年 (SJ sports)」「「いじらない」育て方~親とコーチが語る遠藤保仁」「僕らがサッカーボーイズだった頃2 プロサッカー選手のジュニア時代」など。

公私ともに絶好調のサンタクララ守田英正がサウジ戦の勝利の原動力となる

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守田英正(サンタクララ/26歳)

「麻也(吉田=サウサンプトン)君やトミ(冨安健洋=アーセナル)がいない中で不安視されるところもあるけど、『大丈夫』だと見せつけたい」

 1月27日のカタールW杯最終予選・中国戦(埼玉)。中盤の左インサイドハーフで先発した守田は、今まで以上に攻撃的姿勢を鮮明にし、大迫勇也(神戸)の先制点につながった伊東純也(ゲンク)のPK奪取をお膳立てするパス出しを披露。中盤で光る働きを見せた。

「モリと碧(田中=デュッセルドルフ)の3人は誰がどこをやっても違和感なくやれる」と代行主将の遠藤航(シュツットガルト)も絶賛。森保ジャパンの不可欠な存在の1人になりつつある。

■2018年にA代表デビュー

 大阪府高槻市生まれの守田は26歳。金光大阪高校から流通経済大学に進み、2学年下の旗手怜央(セルティック)、三笘薫(サン・ジロワーズ)らとともに2017年ユニバーシアード(台北)で優勝。その称号を引っ提げ、2018年に加入した川崎でいち早く定位置を確保。躍進ぶりが森保一監督に認められ、新体制初陣だった9月のコスタリカ戦(吹田)で国際Aマッチデビューを飾った。

 2019年アジア杯(UAE)もメンバー入り。遠藤、柴崎岳(レガネス)らに続くボランチの新戦力と期待されたが、大会直前に肉離れを起こし、大舞台を棒に振ってしまう。その後、同年6月のトリニダード・トバゴ戦(豊田)でいったん代表に復帰したものの、再び外れ、2021年3月の日韓戦(横浜)で本格的に再浮上するまで2年以上の時間を要した。

■ポルトガル移籍で世界基準に目覚めた

 そこで強烈なインパクトを残し、宿敵撃破の原動力になったのを機に森保一監督の評価が再び急上昇。同年1月にポルトガル1部・サンタクララへ移籍したことで、世界基準に目覚めたのも大きかっただろう。

「海外に移籍してから得点へのこだわりがもの凄く増えましたし、数字が大事だなと感じます」と目を輝かせる守田の変貌ぶりに周囲も驚かされた。 国内組の稲垣祥(名古屋)は「代表のスタッフとも話したけど、『この数カ月でこんなに変わるんだね』と。守田も海外移籍で自信をつかんだんだと思います」と神妙な面持ちでコメントしていたほどだ。

 あれから10カ月が経過し、代表での存在感は増していく一方だ。

欧州でのステップアップ願望

 9月から始まった最終予選序盤は、2018年ロシアW杯戦士・柴崎に先発を明け渡す格好だったが、序盤3戦2敗の崖っぷちに瀕した10月の豪州戦(埼玉)で田中碧とともに4DF-3MF-3FWの<逆三角形の中盤>を形成。日本は試合内容が大きく改善され、悪循環を断ち切ることに成功する。

 これを機に守田も重用され始める。11月のオマーン戦(マスカット)こそ累積警告で出場停止となったものの、中国戦では攻守両面で目覚ましい働きを見せた。

 彼が劇的な成長曲線を描く背景の1つに、欧州でのステップアップ願望がある。

 実は昨年8月の移籍市場クローズ直前にはトルコの名門フェネルバフチェへの移籍合意報道も流れた。が、サンタクララ側の要求金額が高過ぎて話が立ち消えになったという。この1月も、英2部・ルシティ行きが有力視されたが、それも実現しない見通しだ。

 サンタクララが、ポルトガル沖1000㌔の大西洋上のアゾレス諸島にあるため、本人は代表戦のたびに移動負担が非常に大きいことを危惧している。9月のオマーン戦(吹田)の際も、コロナ禍の特例措置である3日前入国が叶わず、「自分が島のクラブにいるので……」と悔しさを吐露した。

■豊かな表現力と理知的な部分

 先輩・遠藤のように欧州5大リーグに移籍できれば移動面でも楽になり、代表でより強固な地位を築ける。「もうすぐ追いつきますよ」と遠藤に冗談交じりに言ったというから、野心満々なのだろう。

 間もなく第1子が誕生するのも大きなモチベーションだ。守田は2020年元日にモデルの藤阪れいなさんと結婚。お腹がふっくらした妻を浜辺で抱き締める写真が今月SNSで投稿され、近日中にパパになる予定だ。

 2022年カタールW杯イヤーの守田は、まさに公私ともに絶好調なのだ。

「4-3-3の攻撃の厚みが足りないのは、僕や田中碧の仕事の質が足りていないから。今のボランチは攻撃も守備も全部やらないといけない」とギラギラ感を押し出す男は、豊かな表現力と理知的な部分も強みにし、まずは2月1日の次戦・サウジアラビア戦(埼玉)の勝利の原動力になってほしい。

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