ベテラン捕手の梨田昌孝さんの教え「誘いを断れる人と付き合っていけよ」
「野球選手をやっていくうえで、断れる人と付き合っていけよ」
銀座で、レミーマルタンやヘネシーをごちそうになりながら、こう言われたことがある。バブルを教えてくれたというか、バブルを見学させてくれた人でもある。
その梨田さんがロッテとのダブルヘッダー第1試合に代打で出場した。
同点の九回2死二塁。この回、点が入らなければその時点でリーグ優勝が消滅する。そんな絶体絶命のピンチで、加藤正樹に代わるピンチヒッターとして打席に入った。
マウンド上は抑えの牛島和彦さん。梨田さんは高め、ストレート系の球を振り抜いて中前打。二塁走者の鈴木貴久さんは捕手のタッチをかいくぐるようにして転がりながらホームイン。球審が両手を広げて「セーフ!」とコールした瞬間、ブルペンの中にいた私は思わず、「やったー!」と叫んでいた。
立ち上がった鈴木さんはベンチから飛び出してきた中西太ヘッドコーチと抱き合う。2人はそのままグラウンドに転がると、泥まみれになりながら喜んでいた。