大阪桐蔭は高校野球では無敵なのに…森友哉世代以降のOBがプロでパッとしない謎解き
プロで活躍したOB投手は3人くらい
投手の育成力を不安視する声もある。
「毎年、多くの逸材を獲得しているものの、特に投手がプロで大成していない。来年のドラフトで1位指名が有力視されている左腕エース・前田悠伍(2年)も、順調に育ってくれればいいのですが……」
と話すのは、パ球団のスカウトだ。
「プロで活躍したと言えるOB投手は今中慎二、岩田稔、藤浪晋太郎の3人くらい。最近では、今年3月に卒業した最速154キロ右腕の関戸康介が高校1年時からドラ1確実と言われていましたが、故障もあったにせよ、3年夏は公式戦で一度も投げずに日体大へ進学しました」
■実力を差し引いて評価
別のセ球団スカウトは、大阪桐蔭の“ネームバリュー”が伸び悩む一因とみている。
「大阪桐蔭は学校名だけで対戦相手を威圧することができる。組み合わせ抽選で大阪桐蔭と初戦で当たった学校の選手の様子を見れば明らかです。試合で先制されただけで戦意が喪失し、運よく先制できても、いつ追いつかれるかわからない重圧と闘っている。一方、大阪桐蔭の選手は常に気持ちに余裕がある分、萎縮したり、弱気になったりすることなく、ノビノビとプレーできる。しかし、プロの世界では大阪桐蔭のネームバリューは通用しない。だから大阪桐蔭の選手はいくらか差し引いて評価をしています」
こんな指摘もある。
「昔のPL学園や今の横浜のように、プロでもやっていけるような教育をしていないのではないか」とは、ベテランスカウト。
「多くの卒業生をプロに輩出してきたPL学園の選手は高校3年間、徹底して野球を叩き込まれるだけでなく、厳しい上下関係の中で精神的にも鍛えられた。今は鉄拳はおろか、口で厳しく言っても『言葉の暴力』だと批判される。PLのようなやり方はできませんが、それでも横浜は、投手であればプロに入ってから投げることに集中できるように、牽制やフィールディングを徹底的に叩き込む。選手がプロで力を発揮するための土台づくりに重点を置いているのです。大阪桐蔭でもそういったことは教えているのでしょうが、勝つため、試合で結果を出すための指導が優先なのでしょう」
甲子園でいくら実績があっても、プロで成功するとは限らない。いずれにせよ、プロが大阪桐蔭の選手の獲得に慎重になっていることだけは確かなようだ。