全国高校選手権初Vの岡山学芸館・高原良明監督を直撃! 雑草軍団「奇跡の軌跡」
全国高校サッカー選手権で全国3883校の頂点に立った岡山学芸館。国立競技場で5万868人の大観衆が見守った東山(京都)との決勝で、リードしてからも「つなぐサッカー」を貫き、岡山県勢として初制覇を果たした。コーチに就任した2003年ごろ、わずか十数人のサッカー部は空き地でボールを蹴っていた。部に関わって20年、就任15年で奇跡を起こした高原良明監督(43)を直撃した。
■縦に速いポゼッションサッカーが肝
──決勝戦出場メンバー13人には、プロ内定者、Jリーグ下部組織の出身者がひとりもいない「雑草集団」だった。
「ベスト8だった夏のインターハイを終えて今大会の目標を国立でプレーができる4強に設定する中で、個人のレベルアップが必要なのは分かっていました。でも、それには限界があります。個人の能力が高いチームに、グループ、組織力で立ち向かうことにこだわりました」
──準決勝ではタレント集団の神村学園(鹿児島)を倒し、決勝ではC大阪内定のMF阪田をはじめ、Jユース出身者が並ぶ東山に勝利。どうやって立ち向かった?
「攻撃でも守備でも常に数的優位な状況をつくること。ボールを持っている選手をサポートしてカバーしあう。1対1ではなくて2対1、3対2、3対1という状況を常につくる。これは誰かがサボると成り立たない。常に動いていないといけないし、ハードワークが求められるので疲れますが、選手たちはよく頑張ってくれました」
──前評判が高くない中で優勝できた要因は?
「引いて守ってカウンターというサッカーは好きじゃないので、縦に速いポゼッションサッカーをテーマにしました。攻守の切り替えの速さ、パススピードの速さ、ボールへの執着心にこだわりました。うちはボールを持ちながら攻撃したい。プレッシャーを受けても相手ゴールを見ながら球を動かして前進していく。いかに相手のバイタルエリア(ペナルティーアーク周辺のDFラインとMFラインの間のスペース)に多くボールを持っていけるか。今大会は6試合(8人が得点して計14ゴール)やりましたが、これだけはどこにも負けなかったと思います」
■森保Jと対照的なPK戦全員成功
──3回戦の国学院久我山(東京A)、準決勝の神村学園戦ではPKを制した。プロでも怖がる右上や左上にズバズバ決めて、2試合で計9人が一回も外さなかった。その秘訣は?
「基本的に週に2度、県予選の間は試合前日以外は毎日、自分が思ったところに強いボールが蹴れるように反復練習しました。『上を狙え』なんて指示はしていません。我がチームながら『度胸あるな』と思って見ていました(笑)。ただ、GKが一番はじきやすい腰あたりはやめようと。あとはGKの手に当たってもはじき飛ばして、そのままゴールに突き刺せるように、速くて強い球を蹴るように指導はしています。だから『助走が短いよ』と助言することはありました」
──高原監督の恩師でもある平清孝ゼネラルアドバイザー(68=元東海大福岡監督)がサポートしている。
「昨年の4月から手伝ってくれていて『目をつぶってでも四隅に蹴れるくらい練習をしろ』と指導してくれました。県予選の1回戦から可能性があるので、PKの準備は絶対に必要です」
──昨年のカタールW杯の決勝T1回戦で日本がクロアチアにPK戦で敗れた。外したMF南野、MF三笘、DF吉田が置きにいくように蹴っていたのが印象的だった。
「もちろん、選手権よりW杯の方が大きなプレッシャーがかかりますが、コースも甘かったし、そう見えました。うちの場合は『後悔しないように強く蹴り込もう』と言っています」
──敗れた日本を擁護する意味も含め、「PKは運」という説もある。
「多少は運もあると思いますが、しっかり準備して臨めば、大きな重圧がかかった状態でも、積み重ねてきたものが出る。日頃の練習で蹴り込んできた成果だと感じたので、運だけでは片付けられないと思います」