米国ならでは? メジャーリーグで不正投球が完全になくならない3つの理由
特に、打者の一振りで逆転満塁本塁打を打たれて敗戦投手となり、結果的に年俸の査定にも影響するとなれば、投手にとって相手を抑えるためにあらゆる努力を行うのは、たとえそれが規則上不正であるとしても、当然の試みとなる。そして、このとき、倫理や道徳は不正投球の問題の枠外に置かれているのである。
あるいは、通算314勝を挙げて野球殿堂入りするだけでなく、「不正投球を行っているのは公然の秘密」と言われたゲイロード・ペリーでさえ、実際に不正投球を理由に退場処分を受けたのは22年間の選手生活の中で1982年の1回だけであった。これは、摘発の難しさだけでなく、実力がなければその場しのぎの不正投球だけで300勝を達成できるものではないことを示している。
今回不正投球を行ったとして10試合の出場停止処分を受けたマックス・シャーザー(メッツ)も、どの程度の頻度で不正な球を投げていたのかは不明である。また、不正投球を行っていなかったとしても現代の大リーグ屈指の投手であることに変わりはない。
その意味で、シャーザーを巡る一件は、不正投球の根深さだけでなく、不正投球への需要の大きさを物語っているのである。