阪神岡田のブレない「マイナス思考的危機管理」首位快走も頭によぎる“2008年のおぞましき悪夢”
「いやいや、そらまだまだやろ。(貯金)23でも勝てんかったやんけ、そんなんおまえ」
阪神の岡田彰布監督(65)が交流戦直前に貯金15とした際、こう言っていた。
チームは開幕から絶好調。7日の楽天戦でも大勝し、2位のDeNAに6.5ゲーム差で首位を独走しているが、ベテラン指揮官に慢心はなさそうだ。前任時代の2008年、23個の貯金をつくりながら巨人に逆転優勝を許し、引責辞任をしたことが常に頭にあるという。
08年は今季と同様、開幕から快進撃を続け、7月22日にマジック46が点灯した。巨人に最大13ゲーム差をつけ、優勝間違いなしと言われたが、7月終了時で60勝32敗1分けだったチームは8月以降、22勝27敗2分けと急失速。巨人に大逆転を許し、岡田監督は同年限りでユニホームを脱いだ。
■最悪の事態を想定してリスク管理
その年は8月に北京五輪が行われ、チームの主軸だった新井(貴浩=現広島監督)が大会期間中に腰椎を骨折。長期離脱を余儀なくされたことが失速の要因になった。阪神元投手コーチの福間納氏が言う。
「リーグ屈指といわれた投手陣が夏場以降に崩れたことも、失速の要因になりました。3、4月は先発、リリーフともに盤石でしたが、6月に入って先発が調子を落とし(17試合で防御率5.40)、救援陣にしわ寄せが来た。無理がたたったこともあり、8月以降、救援陣が打ち込まれるケースが目立った。今季の岡田監督の投手起用を見ていると、08年と同じ轍を踏まないよう、意識しているように見えます。もともとマイナス思考で最悪の事態を想定してリスク管理をするタイプ。
前回就任時よりも『円くなった、優しくなった』という声もありますが、先日も『ズルズル行きそうな負け』と発言するなど選手に危機感を植えつけつつ、選手起用、采配に関してはむしろ、前任時よりも『俺が責任を取る』という覚悟のようなものが垣間見える。その一つが先発投手の起用法。分業制が当たり前になっている中で、極力、長いイニングを投げさせています」
6日の楽天戦では、前日の試合で7人の救援投手をつぎ込んだこともあり、先発の村上を4失点で完投させるなど、ビハインドの展開でも先発を引っ張る試合が少なくない。先発投手の平均投球回は12球団でトップの6.20(7日時点)。唯一の6イニング超えだ。
「村上、大竹が大活躍するなど、いい意味での誤算もありますが、先発が長いイニングを投げれば当然、救援投手の負担は軽くなる。救援投手に休養日を設けていることもしかりです。リリーフ投手だった僕自身、今日は投げない、という日が1日あるだけで疲労度が全く違う。岡田監督は現役時代、僕ら投手との付き合いを欠かさず、投手の気持ちを理解しているはず。まして08年は夏場に救援陣がガタッときて苦労しましたから、なおさらでしょう」(福間氏)