阪神の来季人事の目玉は「鳥谷敬の入閣」 阪急と岡田監督が温める後継者問題にくすぶる火種
「後継者? それは角さんとの約束やからな」
阪神の岡田彰布監督(65)は、周囲にこう話している。
「角さん」とは、球団の親会社・阪急阪神ホールディングス(HD)の角和夫会長兼グループCEO(74)のことだ。
阪神は昨季限りで退任した矢野燿大前監督の後任として、阪神電鉄と球団は平田勝男二軍監督(当時)を阪急阪神HDに具申したものの、角会長が岡田監督の再登板を要望したことで、2008年以来、15年ぶり2度目の監督就任に至った。
05年以降、リーグ優勝から遠ざかるチームの再建と共に、角会長が岡田監督に託したのが後継者を含めた指導者の育成だ。
■指導者の人材難
近年の阪神は指導者の人材難が顕著だ。火の玉ストッパーとして活躍した藤川球児氏は、球団フロントが将来の監督候補として高く評価しており、現在は球団本部付SA(スペシャルアシスタント)として、新外国人の調査にも加わっている。
その一方で、生え抜きスター選手の他球団流出が目立つ。中でも、投打の中心選手として活躍した鳥谷敬、能見篤史の両氏は、去就を巡って球団と揉める形で、それぞれロッテ、オリックスに移籍した。
「21年オフには球団が翌年も契約を更新するつもりだった山田勝彦(日本ハム)、高橋建(広島)両コーチが相次いで他球団へ移籍するなど5コーチが一斉に退団。フロントは組閣に苦心した経緯がある。05年に優勝した岡田監督が再登板して結果を出したことで、03年、05年優勝メンバーを呼び戻し、指導体制の充実化を図りたいのです」(球団OB)
阪神は坂井信也オーナー時代(08~18年)の終盤にあたる15年オフに、03年、05年優勝メンバーである金本知憲監督を招聘して以降、FA補強に頼らない生え抜き中心のチームづくりを進めてきた。その金本監督が種をまき、次の矢野燿大監督が芽吹かせ、岡田監督が花を咲かせた。「勝ち方」を知る岡田監督が選手起用から攻撃時のサインに至るまで全てを仕切ったことで、優勝を果たしたといっていい。
が、その岡田監督の任期は来季までの2年間。元の勝ちきれないチームに逆戻りしないためにも、後継者育成は急務。今オフには一、二軍のコーチ陣のテコ入れが断行されるともっぱらだ。
来季組閣で目玉になりそうなのが、今春キャンプで臨時コーチを務めた鳥谷氏の入閣だ。岡田監督が前回監督時(04~08年)の04年にドラフト自由獲得枠で入団。1年目から遊撃レギュラーに抜擢され、2000安打を達成した。岡田監督にとって、早大野球部の直系の後輩でもある。
「鳥谷氏の現場復帰は岡田監督のみならず、早大OBである角会長も望むところでしょう。角会長と岡田監督が後押しすれば、『ポスト岡田』の最有力候補として、再びタテジマのユニホームを着る可能性は十分にある」(在阪放送関係者)