打撃は異次元のレベルへ昇華、野手専念の今季が「三冠王」の最初で最後のチャンス
手術明けのため、今年は打者に専念するしかない。手術したのは右肘だから、上半身のトレーニングには当然、制約が生じる。したがって自主トレから下半身を徹底的に鍛えた。
新たな目標は「走ること」。連日のようにダッシュを繰り返し、下半身をいじめ抜いた成果は打撃にも表れている。
エンゼルス時代は屋外のフリー打撃をほとんどやらなかった。室内にこもってマシン打撃を繰り返すことが多かったが、ドジャースでは積極的に屋外で打った。
野手組のキャンプが始まるなり、他の主力とともにほぼ1日おきにグラウンドに出てフリー打撃。バックスクリーン越え、飛距離140~150メートルという特大の当たりを連発し、首脳陣やナインの目を白黒させた。
打球の半分近くが面白いように外野フェンスを越えていく。その飛距離といい、確実性といい、打撃面で進化しているのは間違いない。ドジャースの首脳陣たちは、大谷のフリー打撃を見てこんなふうに話しているという。
「大谷は下半身の力を利用して打球を遠くに飛ばしている。始動で地面を強く蹴り、その力を足から腰、そして腕と順を追って伝えている。そのほとんどを芯でとらえているのはバットがボールに対して最短距離で出ていることが大きいが、それだけではない。下半身がどっしりと安定しているからこそ、バットの軌道もブレないし、正確にボールをとらえられるのだと思う」
オフの間に下半身を強化したがゆえに、ボールを正確にとらえる確率は上がり、打球の飛距離もこれまで以上に伸びたようなのだ。リハビリが進むにしたがって、上半身にも強い負荷をかけられるようになる。そうなったら、いったい、どれくらい打つのか、どこまで飛ばすのか、想像もつかない。