《松永浩美の巻》僕が専属打撃投手をしていた頃にブチギレさせてしまった「初球ボール」
あれは忘れもしない北九州市民球場でのことです。当時、僕は松永浩美さん(64)の専属打撃投手を務めており、試合前のフリー打撃に登板しました。
フリー打撃で大事なのは、選手が本腰を入れて打ち出す1球目。「その1球がその日のストライクゾーンの基準になるから、絶対にストライクを投げろ」と、松永さんは日ごろから口を酸っぱくしていました。
打撃投手のボールは球威がないので高めに浮きやすい。僕も初球にストライクを投げるのに四苦八苦。松永さんに「いっちゃん、またボールか」と苦言を呈されたことが何度もあります。
北九州でのその日もボールから入ってしまい、松永さんは途中でバッティングを中止。さらに打撃ケージの中で手袋を脱いでヘルメットの中に入れると、そのヘルメットをベースの上に置き、バットも置いてベンチに下がって行きました。
僕は即座にヘルメットとバットを掴んで、松永さんの元にダッシュ。「すいませんでした!」と頭を下げる僕に、松永さんはこう言いました。