【スポーツ科学で読み解く二刀流】投手・大谷 手術明けの今季は「スイーパー」の使い方がポイントに
今季、投打二刀流の復活を目指す大谷翔平(30)。投手、打者として大活躍する秘密は何か──。日本における「バイオメカニクスを活用した動作分析研究」のトップランナーで、ネクストベース社の上級主席研究員の神事努氏(国学院大学人間開発学部健康体育学科准教授=写真)が、スポーツ科学の観点から解き明かした。 (数値、データはネクストベース社提供)
◇ ◇ ◇
──大谷は2018年秋の1回目の右肘手術後、肘への負担に考慮し、以前よりショートアームのコンパクトなフォームに変えた。2度目の手術後となる今回、スプリングトレーニングのブルペンでは、よりコンパクトなフォームで投球練習する様子が見られた。
「球速が上がるにつれて肘へのストレスも上がっていく。これをどう避けるのか、どう適応するのかというところがポイントになると思います。フォームの変更に加えて、ボールの質にも着目していくと、大谷選手が何をしようとしてるのかという謎解きにつながります。基本的に直球はあまりシュート回転せず、カットボール系の変化をしていました。23年の直球の平均変化量は縦が36センチ、横が10センチ。1度目の復帰後の21年には、ボールの横変化量が18年と比べて約6センチ分減りました。リリースポイントが約ボール1個分前になったことで、直球がカットボール気味に変化するようになった。直球がジャイロ気味の軌道なので、(大谷から見て左側に曲がる)スライダー系は得意。スイーパーとの相性が良くなり、直球とほぼ同じ軌道で落ちるスプリットを効果的に使えるようになった。この球質をどう生かすのかというところでしょう」