【スポーツ科学で読み解く二刀流】 打者・大谷が備える「コンタクトしながら長打を放つ高等技術」
今季、投打二刀流の復活を目指す大谷翔平(30)。投手、打者として大活躍する秘密は何か──。日本における「バイオメカニクスを活用した動作分析研究」のトップランナーで、ネクストベース社の上級主席研究員の神事努氏(国学院大学人間開発学部健康体育学科准教授=写真)が、スポーツ科学の観点から解き明かした。(数値、データはネクストベース社提供)
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──昨季は54本塁打、130打点で2冠を獲得。打率.310も含め、キャリアハイの成績を挙げた。
「打球の速度(全打席)は過去で一番速かった。23年が151.9キロだったのに対し、24年は154.0キロまでアップしました(MLB平均は142.4キロ)。速度そのものがかなり上がった。一方、スイングの速度に関しては、実はメジャー全体で8番目。一番速いスタントン選手(ヤンキース)の130.7キロに対し、大谷選手は122.8キロ。8キロほどスイングの速度としては遅いのが特徴です。打球が速いとスイングも速い、と思われがちですが、大谷選手はそうではない。では何が打球の速度を生み出しているかというと、コンタクトのうまさです」
──大谷は打球速度が速いうえ、確実性も兼ね備えているという。その指標のひとつが「バレルパーセント」。バレルゾーン(最も長打が出やすいとされる打球角度と打球速度の範囲。打球速度約158キロ以上で打球角度26~30度など)で打った割合だ。
「24年のバレルパーセントは13.8%で、ジャッジ選手(ヤンキース)に次いで2番目でした。さらに、ハードヒット率(約153キロ以上の打球)も全体で2位。きちんと芯で捉える能力が高いことが特徴です」