「少年少女昭和SF美術館」大橋博之編著
■子供時代に夢中になったSFシリーズとの再会
昭和30年代から60年代にかけて刊行されたジュブナイル(子供向け)SFシリーズの表紙絵を年代順に並べ、その歴史をたどったコレクションブック。
日本のジュブナイルSFシリーズの歴史は、昭和30年から刊行が始まった「少年少女科学小説選集」(石泉社)で幕を開ける。同シリーズは、売れ行きが悪く完結前の21巻で打ち切りになってしまうが、後続の「少年少女世界科学冒険全集」(昭和31~33年 講談社)は、SFが宇宙時代の到来を告げる新しい読み物として子供たちの人気を呼び、爆発的なヒットになったそうだ。
同シリーズ全35巻ほぼすべての表紙絵を手掛けたのは、絵物語やプラモデルの箱絵で人気を博していたあの小松崎茂だ。第25巻「宇宙戦争」(ハインライン著)の表紙絵では、作品中では詳しく描かれていない主人公のコスチュームが特撮映画をほうふつとさせるデザインで描かれている。
その他「サンヤングシリーズ」(全37巻 昭和44~47年 朝日ソノラマ)や、「少年少女世界SF文学全集」(全20巻 昭和46~48年 あかね書房)、そして昭和61年の「SFロマン文庫」(全30巻 岩崎書店)まで36もの全集を網羅。当時のシリーズは、上製本に箱入りのものが多く、その表紙だけで子供たちをわくわくさせていた。描き手もSFアートの第一人者と称された加藤直之や、ユーモラスの中に毒を含んだイラストが持ち味の楢喜八、若き日の横尾忠則や山藤章二など、多彩な人々が手がけている。「日本SFの父」と呼ばれた海野十三らによる昭和20年代の科学冒険小説など、シリーズ前史ともいえる作品や、SF童話の世界なども網羅。昭和に子供時代を過ごした年代にはたまらない一冊だ。