「嫌われる勇気」岸見一郎、古賀史健著
■悩める青年と哲人との対話形式で説くアドラーの思想
本書は、フロイトが提唱したトラウマなどの原因論を否定し、人間はみな「なにかしらの目的に沿って生きている」とする目的論を打ち出したアドラーの個人心理学の精髄を、悩める青年とそれに答える哲人との対話という形式で紹介したもの。「いまのあなたが不幸なのは自らの手で〈不幸であること〉を選んだからである」「これまでの人生になにがあったとしても、今後の人生をどう生きるかについてなんの影響もない」「自由とは、他者から嫌われることである」……。
これら哲人の言葉に対して青年は、それは単なる理想論だ、そんな考えをできるはずがないと食ってかかる。一方、哲人は、「世界とは、他の誰かが変えてくれるものではなく、ただ〈わたし〉によってしか変わりえない」ことをアドラーの思想に沿って懇切丁寧に説いていく。
読者もまた最初はアドラー心理学の独特な考え方に戸惑いながらも、読み終えたときには自分を変えられるかも知れないと感じることができる。
既成概念を取り除かれ、新たな思想に目を開かれたときのすがすがしさは感動的ですらある。