「流されゆく日々3」五木寛之著
■英雄のわがままを認めない日本社会
日刊ゲンダイ本紙で1975年から続くデーリー・エッセーの文庫化。3巻となる本書には77年後半分を収録する。
同年9月3日の王貞治によるホームラン世界記録達成の話題で書き出した章では、「王選手は偉大だな、と思う反面、かわいそうだな、という気持ちを押さえることができない」と英雄の今後を憂う。
なぜなら、世の中は英雄に対して、その人間のわがままを認めるような自由な社会ではないからだと。その他、喫茶店や映画館に足を運ぶことがデラックスで豊かな気分にさせてくれた学生時代の思い出、イランや北海道などの旅先での雑感など。芸術から風俗にいたるまで琴線に触れた日々の思いをつづる。
(双葉社 620円)