『世界「比較貧困学」入門』石井光太著

公開日: 更新日:

■日本国民の6人に1人が“相対的”貧困の現実

 世界の極貧地域や裏社会を歩いてきたノンフィクション作家が取り組む貧困問題。特に世界的な視野の中に日本の「相対的貧困」を位置づけようとする試みだ。

「1日1.25ドル以下での暮らし」を基準とする絶対的貧困は日本には希少。しかし「等価可処分所得が全人口の中央値の半分未満」という相対的貧困で見ると、単身所得が約150万円以下となり、日本では国民の6人に1人が当てはまる。ではその実態はどうか。たとえば貧困者は世界的にスラムを形成し、固まって住むことで少しでも安心を得ようとする。しかし日本では経済成長と中途半端な福祉政策がコミュニティーとしての低所得地帯を解体し、いまは旧に復する可能性もない。

 充実した義務教育制度のおかげで日本は識字率の高さを維持しているが、子どもたちの家庭環境の差を考慮しない平等教育のために低所得世帯の子どもたちは小さなころから劣等感を植え付けられるばかりになっている。犯罪、食生活、性、病と死など多岐にわたって世界との比較を試みている。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    佐々木朗希を徹底解剖する!掛け値なしの評価は? あまり知られていない私生活は?

  2. 2

    江藤拓農水相が石破政権の最初の更迭大臣に?「隅々まで読んだ」はずの食糧法めぐり“逆ギレ誤答弁”連発

  3. 3

    「相棒」芹沢刑事役の山中崇史さんが振り返る俳優人生…地下鉄サリン事件「忘れられない」

  4. 4

    吉幾三(5)「お前のせいで俺と新沼謙治の仕事が減った」

  5. 5

    みのもんたさんが自身のスキャンダルで見せた“類まれな対応力”…明石家さんま、石田純一との共通点

  1. 6

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  2. 7

    大阪・関西万博もう間に合わず? 工事未完を「逆転の発想」で楽しむ方法…識者が皮肉たっぷり提唱

  3. 8

    日本代表FW古橋亨梧の新天地は仏1部レンヌに!それでも森保ジャパン復帰が絶望的なワケ

  4. 9

    維新は予算案賛成で万々歳のはずが…ゴタゴタ続きで崩壊へ秒読み 衆院通過の自民はニンマリ?

  5. 10

    松坂桃李「御上先生」第7話2ケタでV字回復へ 詩森ろばの“考えさせる脚本・演出”はTBS日曜劇場からの挑戦状