『世界「比較貧困学」入門』石井光太著
■日本国民の6人に1人が“相対的”貧困の現実
世界の極貧地域や裏社会を歩いてきたノンフィクション作家が取り組む貧困問題。特に世界的な視野の中に日本の「相対的貧困」を位置づけようとする試みだ。
「1日1.25ドル以下での暮らし」を基準とする絶対的貧困は日本には希少。しかし「等価可処分所得が全人口の中央値の半分未満」という相対的貧困で見ると、単身所得が約150万円以下となり、日本では国民の6人に1人が当てはまる。ではその実態はどうか。たとえば貧困者は世界的にスラムを形成し、固まって住むことで少しでも安心を得ようとする。しかし日本では経済成長と中途半端な福祉政策がコミュニティーとしての低所得地帯を解体し、いまは旧に復する可能性もない。
充実した義務教育制度のおかげで日本は識字率の高さを維持しているが、子どもたちの家庭環境の差を考慮しない平等教育のために低所得世帯の子どもたちは小さなころから劣等感を植え付けられるばかりになっている。犯罪、食生活、性、病と死など多岐にわたって世界との比較を試みている。