「まるまるの毬」西條奈加著
江戸・麹町の菓子舗「南星屋」には、毎日、開店前から行列ができる。店には、主人の治兵衛が諸国を巡り、覚えてきた各地の銘菓が日替わりで並ぶ。そんなある日、治兵衛は平戸藩に訴えられ南町奉行所で取り調べを受ける。南星屋で以前に商った「印籠カステラ」が、平戸藩松浦家の門外不出のお留め菓子「カスドース」と同じだと疑われたのだ。実は、印籠カステラは、治兵衛が子供のときに食べた思い出の味を再現したものだが、それを打ち明けるわけにはいかない。治兵衛は疑いを晴らすため、異なる製法で印籠カステラを再現することに。(「カスドース」)
出生の秘密を抱えた治兵衛が営む菓子舗を舞台に描く連作時代小説。
(講談社 1450円)