「判決破棄(上・下)」マイクル・コナリー著、古沢嘉通訳
マイクル・コナリーには、「ハリー・ボッシュ」シリーズと、「リンカーン弁護士」シリーズがある。どちらも人気シリーズだが、この2つが合体したらどうなるだろうという興味に応えた作品が本書。すなわち、「リンカーン弁護士」のミッキー・ハラーと、ハリー・ボッシュが共演する長編だ。
どちらがゲストというわけではなく、どちらのシリーズでもあるとの趣向がミソ。つまり法廷の中を担当するのがミッキーで、法廷の外で調査を担当するのがボッシュ。どちらも主役なのである。交互に語り手となって物語は進んでいく。
少女殺害事件で死刑判決を受けて24年間服役していた男の再審請求が認められ(DNA鑑定で、被害者のワンピースについていた精液が服役囚のものでないことが判明したのだ)、その裁判で特別検察官を務めるのがミッキー・ハラー。弁護士の彼が検察官を務めるのだ。その助手がボッシュ。圧倒的に不利な裁判を彼らがどう戦うのかが読みどころで、いやあ、たっぷりと読ませて飽きさせない。
相変わらずコナリーはうなるほどうまい。2014年に翻訳の出たコナリー作品としては、「ナイン・ドラゴンズ」の方が上位かもしれないが、これも十分に面白いというところにコナリーの凄さがある。