「ゲームセットにはまだ早い」須賀しのぶ著
いやあ、すごいぞ。最近これだけ面白い野球小説も珍しい。とにかく涙が止まらないのだ。感動丸かじりの野球小説だ。
舞台は、アマチュア野球。プロの世界にNPBと独立リーグがあるように、アマチュアの世界には、企業チームとクラブチームがある。ここで描かれるのは後者だ。会社の支援がある社会人野球と違い、クラブチームはそういう支援もないので、選手はそれぞれの職場で働きながら試合をしなければならない。
ここで主役となる新潟の三香田ヴィクトリーは、町おこしの一環としてつくられたチームなので、地元企業の応援がある。専用のグラウンドもある。クラブチームとしてはまだ恵まれているほうだ。それでも、職場で働く時間がきたらグラウンドを離れなければならない。
嘘みたいな話だが、三香田ヴィクトリーはそういう局面に遭遇する。それが都市対抗第2次予選の準決勝戦だ。
実はクラブチームでも第1次予選、第2次予選を勝ち上がれば、都市対抗に出場できるのである。企業チームはやっぱり強いから、クラブチームが第2次予選を勝ち上がるのは容易なことではないが、三香田ヴィクトリーはついにそこまでたどり着くのだ。