「僕は小説が書けない」中村航・中田永一著
高校1年の光太郎は廃部寸前の文芸部に入り、小説を書かなければならなくなる――これはその顛末を描いた学園小説で、軽妙に読ませるが、そういうことよりも本書成立の事情が興味深い。
本書は、中村航と中田永一という人気作家が合作した作品なのだが、興味深い成立の事情とはそういうことではない。
「ものがたりソフト」を使って書かれた小説だというのである。芝浦工業大学卒業の中村航は、母校が開発中の「ものがたりソフト」を使って小説を書くことを中田永一に提案し、そして合作したというのだ。
この「ものがたりソフト」とは、小説を書くことを手助けしてくれるソフトで、何もせずに小説が出来るものではない。「あらすじ」「キャラクター」「プロット」などの要素に必要な事柄をシステムが問いかけてきて、ユーザーはその質問に答えていく。
たとえば「主人公の特徴は何ですか?」「このシーンの時間軸はいつですか?」などの質問に答えると、システムがそれをまとめて整理してくれるものらしい。