「猫的感覚」ジョン・ブラッドショー著 羽田詩津子訳

公開日: 更新日:

 人間にとって身近な存在でありながら、ミステリアスな側面を持っている「猫」。感情をあらわにせず、人に忠誠心を見せない気まぐれな動物は、何を感じ、何を考えて行動しているのか。本書は、英国の動物学者である著者が、人と共存するようになった猫の心理と未来を解き明かした一冊だ。

 人との出合いは今から1万年前。穀物を狙うネズミの駆除役を期待されてのことだ。古代エジプトではペットとして扱われたが、中世ヨーロッパでは教会が猫を敵対視した歴史もあった。今や、ネズミ狩りも爪とぎも嫌われ、運が悪ければ飼い主の都合で気の合わない去勢猫同士が狭い縄張り内で同居する羽目にも陥る。実験によれば生後3週間までの育て方でどんな猫になるかは決まってしまうという。ペットとして去勢され子孫を残せない猫と、人間を信用しない野生の猫に分化した結果、今後最も繁殖するのは人間に慣れない野生の猫だという著者の指摘には考えさせられる。

(早川書房 2200円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ロッテ佐々木朗希は母親と一緒に「米国に行かせろ」の一点張り…繰り広げられる泥沼交渉劇

  2. 2

    米挑戦表明の日本ハム上沢直之がやらかした「痛恨過ぎる悪手」…メジャースカウトが指摘

  3. 3

    陰で糸引く「黒幕」に佐々木朗希が壊される…育成段階でのメジャー挑戦が招く破滅的結末

  4. 4

    9000人をリストラする日産自動車を“買収”するのは三菱商事か、ホンダなのか?

  5. 5

    巨人「FA3人取り」の痛すぎる人的代償…小林誠司はプロテクト漏れ濃厚、秋広優人は当落線上か

  1. 6

    斎藤元彦氏がまさかの“出戻り”知事復帰…兵庫県職員は「さらなるモンスター化」に戦々恐々

  2. 7

    「結婚願望」語りは予防線?それとも…Snow Man目黒蓮ファンがざわつく「犬」と「1年後」

  3. 8

    石破首相「集合写真」欠席に続き会議でも非礼…スマホいじり、座ったまま他国首脳と挨拶…《相手もカチンとくるで》とSNS

  4. 9

    W杯本番で「背番号10」を着ける森保J戦士は誰?久保建英、堂安律、南野拓実らで競争激化必至

  5. 10

    家族も困惑…阪神ドラ1大山悠輔を襲った“金本血縁”騒動