「K体掌説」九星鳴著
「Kは小噺のK、Kは簡潔のK、Kは奇態のK、つまりはKなる体の掌編。これ即ち“K体掌説”なり」という書き出しから始まる、不思議な掌編集。詩のようでもあり、ショートショートのようでもあり、散文のようでもあり、SFのようでもある、短くも切れのいい言葉がずらりと並び、読み手の想像力を刺激してくる。
収録されているのは、新しい創作文字を紹介した「新体字」、汚いということをつきつめて考察する「汚物論」、締め切り前の原稿書きを月に手伝ってもらった話「月弟子」、世にも不思議な入試問題を並べた「はなはだ奇態なる八つの入試問題」、透明人間になろうとした男の受難を描いた「透明人間受難歴」など全68作品。
無名新人のデビュー作という形をとっているが、実は著者の九星鳴とは陰陽師シリーズでおなじみの夢枕獏の別ペンネームだ。長編小説では決して表現できない著者の発想や着想の原点が、短い言葉の端々からにじみ出てくる。
(文藝春秋 1450円+税)