東京の真実に迫った「新・東京ガイド」本特集
「死ぬまでに東京でやりたい50のこと」
2020年五輪に向けて、東京は猛スピードで変わろうとしている。しかし、最新技術を駆使し、汚濁を排除し、美しさと機能性と安全性を誇るだけが東京ではない。知られざるディープスポット、忘れてはいけない負の遺産、受け継がれる街の伝統……。そんな東京の真実に迫ったガイド本を紹介しよう。
大手旅行会社や観光ガイド本が絶対に紹介しない、へんちくりんなスポットやイベントを紹介するウェブサイトがある。「東京別視点ガイド」だ。この中から選りすぐりのへんちくりんスポットを再取材・再構成したのが「死ぬまでに東京でやりたい50のこと」(青月社 1200円+税)である。
著者は同サイト編集長の松澤茂信氏。れっきとした東京ガイド本だが、スカイツリーもディズニーランドも載っていない。1章「驚きのTOKYOグルメ」では、水色のラーメンやコーヒーラーメンなど食欲をそぐ珍料理の店を紹介。エイの刺し身を発酵させたホンオフェを紹介するにあたっては「小便器を鼻に詰め込まれたのかと思った」と解説。味の問題ではない。キテレツが選考基準である。
4章「名物店長と戯れる」では、飲食店のサービス精神の意味を改めて考えさせられるような、珍妙な店ばかり掲載。店主のパフォーマンスが度を越えて面倒くさそうな居酒屋「かがや」(新橋)、店長が毒蝮三太夫ばりに罵倒してくるというトルコ料理屋「ZAKURO」(日暮里)など。正直、今すぐ行きたいとは思えないのだが、話のタネになることは間違いない。
「1日で富士山を5回登頂する」「漫画家になる」「ウソ発見器を作る」「ヨガで空を飛ぶ」など、一見「何それ?」と思うような項目も。著者のちゃめっ気が表れていて、思わず興味をそそられる。
体験型の面白スポットも含め、著者のへんちくりんアンテナは東京都内にくまなく張り巡らされている。バイブレーターを吟味できるバイブバー(渋谷)、10円で眼鏡が買える店(池袋)、頭上から生首が降ってくるお化け屋敷居酒屋(赤羽)、米一粒大のミニチュア寿司を出す寿司屋(浅草)……これらもリアルな東京の姿である(世界に誇れるかどうかはわからないが、珍しくて面白いことだけは確かだ)。
紹介する珍スポット&イベントは合計50。著者が愛と自信と脱力感をもって事細かに解説。「読んで終わりにするよりも、現場を実際訪ねたほうが5億倍は面白い!」とのこと。話がまったく合わない部下、刺激と新奇性ばかりを欲しがる上司、取引先の外国人を連れて、ぜひへんちくりんスポットへ行ってみてほしい。