磯崎新、安藤忠雄らのインタビューでつないだ建築ドキュメンタリー「だれも知らない建築のはなし」
近頃とんと耳にしないのが「ポストモダン」。バブルの代名詞みたいなのがあだになった感があるが、ほんとにバブルの共犯だったんだ、と思わせるのが今週末封切りの映画「だれも知らない建築のはなし」。
当時肩で風切る体だった建築家・磯崎新を筆頭に、彼が海外に紹介した後進の伊東豊雄と安藤忠雄、彼らを迎えたP・アイゼンマン、C・ジェンクス、R・コールハースらのインタビューで構成されるドキュメンタリー。絵柄はいたって地味だが、それぞれ別個のインタビューをつなぐ編集の腕で、さながら批判とびかう論戦の様相を見せるのがおかしい。
ことに耳に残るのが「日本の建築家は話べたで引っ込み思案。それが彼らの作品を神秘的に見せた」というコールハースの指摘。「磯崎は突然だめになった」というアイゼンマンの揶揄の一方、日本側は終始あいまいな低姿勢のまま。バブル期最後の大プロジェクトになった福岡で、海外の人材ばかりが重用され、「日本人の仲間が少なくて寂しかった」とまで言われるのだ。
およそ散々な自滅の宴かと思わせるが、磯達雄・文、宮沢洋・絵「ポストモダン建築巡礼」(日経BP社 2200円+税)は建築雑誌の編集者が趣味のイラストで全国の建築を行脚した解説書。“バブリーなポストモダン”の誇大な顔とも違う、趣味の盆栽を愛づるような目が、これはこれで日本的というべきか。〈生井英考〉