「殿さま狸」簑輪諒著
天正9(1581)年秋、秀吉の親衛隊である黄母衣衆のひとり、家政は、偉大すぎる父・蜂須賀小六と秀吉に屈折した思いを抱き続けていた。半年後、秀吉の毛利攻めが続く中、前線から離れた播磨竜野城で城代を務めていた家政に明智光秀が主君の信長を討ち果たしたとの知らせが届く。父を超えるためにどう動くべきか必死に考え尽くした家政の出した結論は、この機を利用して秀吉を「天下の主へ押し上げる」というものだった。そのために父・小六を使って毛利と和議を結び、羽柴軍を上方へ大返し(総反転)させるべく、家政は家臣の稲田や法斎とともに動き出す。
「阿波の古狸」と呼ばれた家政の葛藤と成長を描く時代長編。
(学研パブリッシング 1350円+税)