「閉店屋五郎」原宏一著
閉店した店や事務所の機器を買い取り、転売する中古屋の五郎は、周囲から閉店屋と呼ばれている。ある夜、見積もり依頼があった定食屋を訪ねた五郎は、依頼主の藤崎に会う前に看板娘の由佳に追い返されてしまう。
翌日、五郎を訪ねてきた由佳は、父親がいつでも店を再開できるように引き取った品を一時預かりにして欲しいと言い出す。聞くと、藤崎は5年間通い続けてきた常連客がある日を境に姿を見せなくなり、店を続ける気力を失ったらしい。由佳の留守に再び店を訪ねた五郎は、藤崎から閉店を決意した経緯を聞く。そして、父娘の板挟みになった五郎は、その常連客・孝子を捜すことに。(表題作)
情に流されトラブルに巻き込まれる五郎を主人公にした連作人情小説集。
(文藝春秋 1550円+税)