あの戦争「外務省善玉説」は本当か

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「外務官僚たちの太平洋戦争」佐藤元英著

 太平洋戦争に関し、外務省は対米英戦争を極力避けようとしたが、陸軍の暴走を押さえることができなかったという印象が強いが、本書を読むとそのような外務省善玉説が間違っていることがわかる。

 佐藤元英氏は、〈日米戦争の開戦手続きにおいて、結果的に外務省は陸軍の要望する無通告開戦に協力することとなった。その経緯を辿ると、外務省内の特に条約局や南洋局の、革新派と称される少壮外交官らが企図した開戦指導が見えてくる。〉と強調するが、確かにその通りだ。

 現在、国会で審議されている安保関連法案についても、自衛隊を地球の裏まで送り出すことを考えているのは外務官僚だ。「俺たちはエリートなので戦場に行くことはない。俺たちは命令をし、非エリートの民衆が命令に従って戦えばいい」という外務官僚の不遜な発想は、戦前から現在まで変わっていないことがわかる。

 また、当事者にとっては深刻であるが、国益に関係のない抗争にエネルギーを費やす外務官僚のグロテスクな姿が浮き彫りになる。陸軍も外務省も、戦争責任について本質的な違いがないことが本書を読んでよくわかった。

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