「成長戦略」が日本を破壊させると一刀両断
「新自由主義の自滅」菊池英博著
体制側になびく経済学者が多いなかで、一貫してアベノミクスをきちんと批判している学者がいる。菊池英博氏だ。私は彼の本が大好きで、ほとんどを読んでいるのだが、普段は日本の経済、財政、金融の分析が中心だ。だが、この本では、韓国、アルゼンチン、ギリシャなどに新自由主義がどのような影響をもたらしたのかを踏まえて、日本経済にいま何が起きているのかを分析している。
しかも今回は、マクロ経済に限らず、労働や農業、安全保障にまで分析の対象を広げているのだ。
一番の注目は、著者が日本を破壊すると喝破している5つの政策、すなわち、法人税減税などの財政改革、派遣法改正や高度プロフェッショナル制度導入などの雇用制度改革、混合診療導入などの医療改革、国家戦略特区、そして農協解体を含む農業改革だ。言うまでもなく、これらは安倍総理の掲げる「成長戦略」の重要な柱だ。それを著者は、日本を破壊する活動だと、一刀両断にしているのだ。
例えば、法人税減税をすれば日本企業の海外流出を抑え、外国企業の国内立地を促進するといわれている。しかし、著者は、それが真っ赤なウソであることを、データを用いて立証している。