「仁義なき宅配」横田増生氏
本の帯には「企業にもっとも嫌われるジャーナリストが書く、衝撃の潜入労働ルポ!」とある。著者は元物流の業界紙記者。2005年、アマゾンの物流センターに6カ月間も潜入、「アマゾン・ドット・コムの光と影」という本を書いて話題になった。本書も同じ手法で、宅配の裏側を暴いていく。
ノンフィクションにはさまざまな取材スタイルがある。なぜ、潜入にこだわるのか?
「この本を書くために佐川急便のドライバー助手もやりましたし、ヤマト運輸の物流の玄関拠点、羽田のクロノゲートでも働きました。実は当初、取材は難航を極めたんです。ヤマト運輸が全然、取材を受けてくれない。クール宅急便の不祥事があるので1年くらいは無理だとか言われて。しかし、その間にも日経新聞の取材などは受けているんですね。僕の取材は受けたくないんだなとわかった。途方に暮れていたときにヤマトは羽田に拠点があり、大勢の人が働いていることを知った。これは潜入できるんじゃないか、と思ったんです」
潜入取材等を通して、日本の宅配ビジネスがいかに過酷なコストカット競争にさらされているか、そのしわ寄せが労働者を痛めつけているかを淡々と浮き彫りにしていく。