「黒闇」草凪優氏
官能小説には不要とされる人間性や愛を描くうちに、登場人物への愛情が高まりすぎたともいう。
「美奈子という女が42歳のヨゴレでね、官能小説ではありえないキャラなんです。だいたい絶世の美女とか学園のマドンナですからね。人物はすべて僕の分身ですが、彼女のことは好きになりすぎて、毒にあたったほど」
そこまでの愛情を抱きながら、ほぼ全員をひどい目に遭わせていくのが、草凪節とも言えるだろう。
「人生はそんなもんでしょ。みんな欲しがり過ぎなんです。恋が実って一瞬でも幸せならいいじゃない? それくらい謙虚に生きれば、楽しい人生が待っていると僕自身も思いたいんですね」
人それぞれのとらえかたはあるが、これは純愛小説だという声もある。
「純粋性欲小説かな。僕は官能作家の中でもノーマルですから。他はド変態ばかり! 女性の唾液を飲みたがる人や、痴漢と覗きで犯罪者みたいな人もいる。そんな中で真面目に愛を語るのはバカみたいだけどね(笑い)」
エロスの中心で愛を叫ぶ草凪文学の新機軸に刮目したい。(実業之日本社 1800円)