「終わった人」内館牧子著
主人公は、63歳で定年を迎え第二の人生がスタートしたばかりの田代壮介。岩手の名門高校から東大法学部に進み国内トップのメガバンクに就職した田代は、最年少の支店長、43歳で業務開発部長と、とんとん拍子で昇進する。しかし、49歳で突然子会社へ出向を命じられ、戻るつもりで必死に働いたが、結局転籍となって社員30人の子会社の専務取締役でサラリーマン人生の幕が閉じた。
自分を「終わった人」、定年を「生前葬」と自嘲しつつ、スポーツクラブ、カルチャーセンターと居場所を探してさまよい、職探しをしても体よく断られる始末。そんな逡巡を繰り返していたとき、思ってもみなかった話が舞い込んでくる。果たして田代の選択は……。
サラリーマンならいつかは必ずやってくる定年をテーマに、会社人間だった男が新しい生き方を求めて試行錯誤する様子を描いた長編小説。著者初めての新聞連載小説でもあり、掲載時から定年後の男心の心憎い描写が話題を呼んだ。
(講談社 1600円+税)