我が家のヒミツ 奥田英朗著

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「家日和」「我が家の問題」に続く家族小説シリーズの第3弾。

 現代日本の家族が抱える問題を多様な視点から描いてきたこのシリーズ。今回のテーマは、言うに言えない家族の「ヒミツ」。

「アンナの十二月」は、16歳になったアンナがそれまで秘密にされていた実の父親に会おうと決意する話。実の父が著名な演出家だと知ったアンナは、実父の周囲の華やかな世界に圧倒され、つい真面目だが地味な育ての父と比べてしまう。いっそ実父のもとで暮らしたいとまで考えるアンナを心配する母や友だち……。

「妻と選挙」には小説家・大塚康夫がシリーズ3度目の登場。突然妻から市議会議員選挙に立候補すると告げられた康夫が、最初は乗り気でなかったものの、徐々に選挙応援にのめり込んでいく様子をユーモラスにかつ温かく描く。

 その他、子供に恵まれない夫婦のそれぞれの葛藤、同期との昇進レースに敗れた男の敗北感に満ちた心境、母が急逝して憔悴しきった父を心配する兄妹、産休中に隣の謎めいた夫婦の動向に神経を尖らせる妻など、粒揃いの全6編を収録。(集英社 1400円+税)

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