「怒鳴り癖」藤田宜永著
マンションの管理人をしている〈私〉は、コンビニから戻ってきてロビーのソファに誰かが寝ているのに気づいた。4階に住んでいる田辺真美ちゃんだった。「私、家出したい」と言うが、外に行く勇気がなかったらしい。
母親に電話している間に真美ちゃんは私の妻にスマホの画像を見せていた。オーロラと、それを撮影した男の子の写真だが、その少年が母子げんかの原因のようだ。その件はそれで収まったが、後日、真美の母が落とした保険証を見て、その名と生年月日が前の妻との間に生まれた娘と同じだと気づいた。(「マンションは生きている」)
思わぬところで危機に陥った男を描く6つの短編。(文藝春秋 1400円+税)