読む人を物語世界に誘う長編小説特集
「世にも奇妙な君物語」朝井リョウ著
ページをめくれば、そこは現実の世界から微妙にズレている不安定な世界だったりする。ほんとはすごい小心者なのに、活字を追っているうちにいつしか犯罪者の心理にどっぷりつかってしまうこともある。物語を満喫できる新刊長編小説をご紹介。
フリーライターの浩子は、酔いつぶれた店から真須美という女に、彼女の家に連れて行かれて介抱された。どうやらそこはシェアハウスらしい。なぜか真須美は同居人に、道端に倒れていた浩子を助けたと説明する。そこに住む4人の男女はみな経済的にも精神的にも自立していて、シェアハウスに住む必要などなさそうに見えた。ちょうどシェアハウスの特集を企画していた浩子は、引っ越しする由可里の代わりに入居することに。だが、ニュースの画面に由可里が映ったことに気がつく。ここの住人は一体……。(「シェアハウさない」)
他に、リア充裁判でコミュニケーション障害と指摘された姉をもつ女性など、奇妙な人びとを描く短編5編。(講談社 1400円+税)