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三島邦弘

ミシマ社代表。1975年、京都生まれ。2006年10月単身、ミシマ社設立。「原点回帰」を掲げ、一冊入魂の出版活動を京都と自由が丘の2拠点で展開。昨年10月に初の市販雑誌「ちゃぶ台」を刊行。現在の住まいは京都。

私の心は「いっきに」天空へ飛んだ

公開日: 更新日:

「星は周る」野尻抱影著

「いっきに読んだ」。今や、本を評する際のひとつの褒め台詞だろう。実は私もときどき使う。けれど、星についての本を形容するには、いささか不適切にすぎる。赤く輝くアンタレース(火星の敵)の名からもわかるように、星は大昔から何も変わらないのだから。

 という知識は本書で得た。正直に告白するが、この本に出合うまで、著者の野尻抱影も知らなければ(最初、タイトルがこれなのかと思ったほどだ)、星に関する知識は皆無に近かった。

 本屋でページを繰って驚いた。戦前と戦後すぐに書かれたものばかりだったのだ。

「空を見上げながら歩いていれば、どんな晩でも淋しくはない。大勢の友だちのウィンクに逢っているのと同じだからである」(「星を覗くもの」)

 冒頭のエッセーで、私の心は「いっきに」天空へ飛んだ。

 野尻抱影は1885年生まれ(1977年没)の天文随筆家、と略歴にある。なるほど。その肩書にふさわしい名文の連続であった。

 たとえば、45年に著された「星無情」。

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