【憲法と民主主義】安保法制を再び問題提起する
「憲法と民主主義の論じ方」長谷部恭男、杉田敦著
昨年の安保法制問題で世間に知られた憲法学者と政治学者。長谷部氏はもともと改憲論者ながらも、安倍政権のやり方に真っ向から異を唱えてブレない存在として世間の信頼を集めた。杉田氏は護憲派で原発問題に国民投票を呼びかけるリベラル派。本書はこの両氏の対談である。
衆院憲法審査会の自民党参考人である長谷部氏が安保法案を「違憲」と断定したときに、明らかに世論の潮目が変わった。それ以来、両氏はしばしばコンビのかたちでメディアにも登場してきた。そして、安保法制推進派は法律の是非は法学者が決めるのではなく政治が決めるのだとする議論を展開。国政の重大事項については司法は判断せず、立法・行政に任せるべきだとする「統治行為論」を展開してきた。
これに対して長谷部氏は「政権がそう思いたいという単なる希望的観測」と一刀両断。2014年の集団的自衛権容認の閣議決定以後、安保法案を作るために専門家による研究会も審議会も公開で議論していないという異常事態が続いている。これこそは国政の一大事というのである。
(朝日新聞出版 1300円+税)