「洋食 セーヌ軒」神吉拓郎著
「うまい牡蠣フライが食いたいなぁ」
同僚とこんな話になったら、何軒の店が頭に浮かぶだろう。今夜、行こうなどとなったら、仕事が手につかないのでは?
本書は直木賞作家が描いた料理を題材にした短編小説集。全17編に鱒、鰻、オムレツ、天ぷらなど、それぞれのメニューがキャストとして登場する。表題作「セーヌ軒」は、うまい牡蠣フライが食べたくなった主人公が、以前暮らした街の洋食屋に10年ぶりに足を向ける……。
男と女、旧友同士ら登場人物の会話は軽妙で“大人の味”がたっぷり。読み進むそばから食べに行きたくなるような誘惑がちりばめられている。(光文社 700円+税)