「熟年売春」中村淳彦氏

公開日: 更新日:

 全国で30万~40万人存在するといわれる風俗嬢や売春婦の過半数は、30歳以上の熟女だという。

「2000年ごろにアダルト業界では人妻や熟女が流行し、今までの上限年齢がなくなりました。ごく普通のおばさんも商品となって、換金できるようになっちゃったんですね」

 ところがブームが過ぎ去った今は、稼げない熟女が増え、路頭に迷いかけているというのが現状だという。

「不況で男性客が減った上に、風営法改正でデリヘルなどの無店舗型風俗が激増し、価格破壊も起きています。で、需要と供給のバランスは完全に逆転。今は女子大生が学費を稼ぐために売春するなんてことが、いくらでもありますからね。人妻や熟女が本番をしても稼げない時代になってしまいました」

 例えば、30~40代の熟女がAVに出演しても、手取りのギャラが3万円を切ることも。もちろん稼げる熟女もいるが、外見のスペック次第。

「都市部の熟女ヘルスや熟女デリヘルに採用されるならまだしも、地方でではまずだめでしょうね。普通は稼げない現実に見切りをつけて、男をつかまえたりするんでしょうけれど、それもできず生活保護に頼るしかなくなってしまう人もいます」

 取材対象者には、明と暗がくっきり分かれている。セックスレスを機に夫には内緒で風俗嬢をこなし月40万~50万円稼ぐ45歳もいれば、スーパーのパートと掛け持ちで6000円の本番風俗を20年間続ける50歳もいる。

 精神的に壊れかけている女性も少なくない。

「この本はエグいエピソードや特殊な例ばかりを集めたわけでは決してありません。これが熟女売春の実情なんです」

 本書で興味深いのは、介護業界に身を置いたこともある著者が、低賃金・重労働で元・介護士から売春業界に流れている女性がここ数年、急増している悲惨な実態にもスポットを当てている点だ。

「ある程度の外見のいい女性なら、介護職よりも売春を、というかキャバクラをすすめたいくらいですね。それくらい介護業界はひどい。アダルト業界が日本の最底辺だと思っていましたが、今は間違いなく介護業界が最底辺。社会貢献などと称して言葉で洗脳し、低賃金で長時間労働させるのですから。その異常さに見切りをつけた人が売春業に向かうのは、ある意味納得のいく傾向ではないでしょうか」(ミリオン出版 1000円+税)

▽なかむら・あつひこ 1972年、東京都生まれ。フリーライター。アダルト業界の実態に詳しく、AV女優や風俗嬢を1000人以上取材。一時期、介護施設の代表を務めた経験から、介護業界の闇も知り尽くす。「崩壊する介護現場」「ルポ 中年童貞」「女子大生風俗嬢 若者貧困大国・日本のリアル」など社会問題に斬り込む著書も多数。



【連載】著者インタビュー

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    僕がプロ野球歴代3位「年間147打点」を叩き出した舞台裏…満塁打率6割、走者なしだと.225

  2. 2

    大谷翔平が看破した佐々木朗希の課題…「思うように投げられないかもしれない」

  3. 3

    “玉の輿”大江麻理子アナに嫉妬の嵐「バラエティーに専念を」

  4. 4

    巨人「先発6番目」争いが若手5人で熾烈!抜け出すのは恐らく…“魔改造コーチ”も太鼓判

  5. 5

    不謹慎だが…4番の金本知憲さんの本塁打を素直に喜べなかった。気持ちが切れてしまうのだ

  1. 6

    大谷翔平の28年ロス五輪出場が困難な「3つの理由」 選手会専務理事と直接会談も“武器”にならず

  2. 7

    バント失敗で即二軍落ちしたとき岡田二軍監督に救われた。全て「本音」なところが尊敬できた

  3. 8

    【独自】フジテレビ“セクハラ横行”のヤバイ実態が社内調査で判明…「性的関係迫る」16%

  4. 9

    大江麻理子アナはテレ東辞めても経済的にはへっちゃら?「夫婦で資産100億円」の超セレブ生活

  5. 10

    裏金のキーマンに「出てくるな」と旧安倍派幹部が“脅し鬼電”…参考人招致ドタキャンに自民内部からも異論噴出