「闘う力」なかにし礼著
2012年、食道がんを陽子線治療で克服した著者だったが、昨年2月、リンパ節に新たながんが見つかってしまう。しかも、今回のがんは前回の治療で陽子線を照射した付近にあり、再度陽子線治療を行えば気管支に穴が開く可能性が高かった。
若い頃に発症した狭心症の影響で心臓が弱く、開胸手術には耐えられる自信がない。仕事は引退し、残された人生を緩和ケアで生きようとすら考えていたという。しかし、主治医らの熱心な説得に心を動かされ、一転、開胸手術を決意。抗がん剤との激しい闘いの末、“再発がん克服”を成し遂げたのだった。
小説を書き続けたことでもたらされた活力や、メンタル面を医学的に支えた「精神腫瘍科」の存在など、著者の闘う力の源も明らかにしていく。(講談社 1000円+税)