「前夜 奥右筆外伝」上田秀人著
戦国大名武田家の家臣だった立花家は、主家が滅びた後、徳川家に仕え禄を得たが生活は苦しい。家督を受け継いだ併右衛門は、出世の手がかりを掴むために役目を得ようと猟官に奔走。しかし、使える金も限られ、手当たり次第に身上書をまくしか手段がない。
書道を学んだ母親に手ほどきを受けた併右衛門の身上書が、部下の悪筆に悩む勘定組頭の目に留まり、勘定下役に取り立てられる。やがて、勘定奉行の書付を担当するようになった併右衛門は、表右筆へと出世。無役のときには望むべくもなかった縁談も舞い込み、妻を迎えた。しかし、妻の津弥は幼い娘を残し病死してしまう。(「立花併右衛門の章」)
人気シリーズ「奥右筆秘帳」の登場人物たちの若き日々を描く連作集。(講談社 640円+税)