「定本 山村を歩く」岡田喜秋著
1970年代に日本の山村を訪ね歩いた名紀行の復刻。
日曜日、ふと山路を踏みたくなり、秩父に向かう。バスの終点、名郷で降りて歩き出し、急坂を上り鳥首峠に出て、持参したコッヘルで紅茶を沸かす。浦山の頂の近くの武士平に、このあたりには珍しい桃源郷のような山上集落があることを思い出し、立ち寄ることに。武士平には登山者をわが子のように迎え入れる老夫婦がいると耳にしたことがある。到着した山上の一軒、庭先に座っていたのがその人、浅見伊吉氏だった。(秩父の隠れ里へ)
その他、紀行文を書く原点となった鳴子温泉近くの中山平に住むこけし作家の家を27年ぶりに訪ねるなど、各地の山村を巡りながら人や風景との出会いをつづった32編を収録。(山と溪谷社 950円+税)